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総務課学融合推進事務室
学融合推進センター事務係

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大学院教育研究会  8 December 2016

第1回大学院教育研究会「大学院教育の課題と可能性」

~大学院教育は何ができるのか~

 平成28年12月8日(木)に、一橋講堂において平成28年度大学院教育研究会が行われました。
 第1部では東京大学・桜美林大学名誉教授の寺崎昌男先生に「大学院教育の課題と可能性」の題で講演をしていただきました。第2部では「大学院教育は何ができるのか」の題でパネルディスカッションを行い、総研大の先生からの事例報告をしていただき、ディスカッションを行いました。

【大学院教育の課題と可能性】
 第1部の寺崎先生のご講演では、近代の大学院教育の理念や制度的な背景について、また海外の大学院教育の紹介、現在の大学院教育がかかえる問題点などをお話いただきました。
 1886年(明治19)年に日本に大学院制度が入ってきたものの、当時は大学院で論文を出して学位をとることは一般的ではなく、また、大学院は学部の付属機関にすぎなかった。それが戦後、占領軍の指導によって、アメリカ型の大学院が入ってきた。そこでは、大学院は学位の取得コースであり、また大学院は学部の付属機関ではなく、独立したスクールであると明確に位置づけられていた。しかし、この段階でも、博士の学位の水準は「独創的研究によって新領域を開拓」し、「研究を指導する能力を有する者」と非常に高く設定されており、3年で到達できるものではなかった。それが1974年の「大学院設置基準」で、博士課程を「自立した研究能力」と「豊かな学識」を養うものとして設定し直した。以降は、「教養ある専門人」をつくるために、課程性や総合性が重視されている。ただ、学部からの独立や総合性は、予算の問題や、事務系の負担などから、必ずしも実現されていない。
 以上のようなお話をご自身の体験を交えながら大変わかりやすく説明してくださいました。
 また、海外の大学院指導マニュアルについても紹介がありました。そこでは、指導のシーケンスへの対応の仕方や、面談と論文評価の重視性などが書かれているとのことです。
 その他、任期制が導入され、テニュアにつくのが非常に難しくなってきている現在、無指導を放置しておくべきではないこと。また、博士号の氾濫が研究水準の低下をもたらすといわれるが、実際にはそうなっていない。むしろどんどん出すようになれば、研究水準が上る側面もあるなどのお話もされました。

【大学院教育は何ができるのか】
 第2部のパネルディスカッションでは、総研大から3人の先生が登壇し、大学院教育についての取り組みをそれぞれ紹介していただきました。

【「大統合自然史(仮称)」について】
 最初に、学融合推進センターの鎌田進先生から、全学教養科目「大統合自然史(仮称)」の授業開発についてのお話がありました。宇宙の誕生から現在までに起こったすべての事象を宇宙・地球・生命・人類の4つの切り口から扱うもので、自立した研究者として自らの研究の学問的および社会的位置づけを俯瞰する総合教育プログラムとして紹介がなされました。そして、夏に行われた試行授業「宇宙・地球編」の実際の様子についても報告していただきました。

【フィールドにおける大学院教育】
 次に、極域科学専攻の伊村智先生から、フィールドでの大学院教育の事例を報告していただきました。フィールド調査の仕方を具体的に教えるというより、現場に行ってデータをとることをとにかく重視するという、フィールドに即した研究という原則を教えているというお話をされました。しかし、一方では、先輩のやり方を見て学ぶのが慣例であり、大学院教育としての指導方法が確立されていないという問題点についても触れられました。

【「生命科学プログレス」について】
 最後に基礎生物学専攻の川口正代司先生から、ラボでの大学院教育の事例について、特に生命科学研究科で進めている「生命科学プログレス」というプログラムについて報告していただきました。このプログラムでは、1人の学生に対し、主任指導教員1名、指導教員1名、プログレス担当教員が2〜3名、実験指導補助1名がつくことになっている。特にプログレス担当教員には所属する研究室以外の教員がつくことになっており、分野を超えた広い視点からのアドバイスが得られるなどの利点があり、成果をあげているというお話でした。

【ディスカッション】
 その後、フロアからの質問に答えるかたちで、ディスカッションが行われました。そこでは、今の自然科学は科研費のように計画があって、それをどうやって実行するかというやり方が主流となっているので、伊村先生のお話にあるような、はじめに現場を知り、そこから持ち帰ったデータをもとに次の計画をたてるというやり方は不利ではないかという質問がありました。伊村先生からは不利な点があるのは確か。しかし、最初から計画を立てていくやり方の場合、想定したものしか見えてこない。研究が小さくまとまってしまうのではないかとのお答えでした。また、総研大の先生による報告は理系の場合だったが、人文科学系の大学院教育は今どうなっているのかという質問がありました。これは寺崎先生から、今の学生には史料に「惑溺する」ということが経験が少なくなっている。また、学会に出たことがない学生もいるということで、学会で発表することの重要性についてもお話くださいました。最後に論文の探し方、書き方についてどのように指導されているか、という質問があり、川口先生から、特に論文の探し方を意識して指導したことはないとの回答。伊村先生も論文の書き方を積極的に指導したことはないが、アメリカの学部を出た学生が、論理的な文章の書き方がきちんとできていて、日本の大学の学生とレベルの差を感じたとのお話しをされました。寺崎先生はそれについて、カルチャーの違いが背景にあるのではないか、以前アメリカ人の研究者から日本人の発表は、ずっと"But","However","Although"と言っていて何が言いたいかわからない。自分たちちはそうは言わない。"And","So","Because",と話すのだというエピソードを紹介され、論理的な文章を書く訓練の必要性について議論がありました。
 以上のように、大学院教育の歴史的背景、また現状の取り組みと問題点を共有することのできた、大変有意義な研究会でした。