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問い合わせ先

総務課学融合推進事務室
学融合推進センター事務係

〒240-0193
神奈川県三浦郡葉山町(湘南国際村)

TEL:046-858-1629、1657(事務直通)
FAX:046-858-1546
e-mail : cpis-office(at)ml.soken.ac.jp

大学院教育研究会  24 October 2017

平成29年度 大学院教育研究会

開催日時:平成29年10月24日(火)13:30-17:00

開催場所:一橋講堂2階 中会議室3・4
(東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2階)

【概要】
 平成29年10月24日(火)に、一橋講堂において、平成29年度・大学院教育研究会が行われました。本研究会では、専門分野を超えた教育をテーマとして、講演と総研大における教育プログラムの開発・実践報告が行われました。また、専門分野を超えた教育に向けた課題についての議論も行われました。

【開会挨拶】
 最初に颯田先生から、開会挨拶があり、研究者になる学生には、専門性の追求と分野を超えた学びの両立が重要であることや、分野を超えた教育をする上での課題について情報交換することの必要性について言及されました。

【講演】
 放送大の加藤先生から「社会文化的学習観と徒弟的教育の復権」という題で基調講演がありました。学習とは知識を獲得する過程であると考える認知主義的学習観に対して、学習を社会的なものと捉える社会文化的学習観についての紹介がありました。社会文化的学習観では、学習を全人格的にコミュニティに参加し、アイデンティティを獲得していく過程と捉えていることや、複数のコミュニティに属することで得られる越境的学びについての説明がありました。最後に、「技を盗め」というような態度は不適当であり、「背中を見せ」つつ、うまく学習の援助をすることが必要であるとの指摘がありました。
 続いて、日本学術振興会の小平先生から「ドイツの教育・研究について」という題で特別公演がありました。ドイツの地政学的特徴と、ドイツの研究・教育環境の関係を中心としたお話がありました。日本のような海に囲まれた島国とは違って、ヨーロッパの国々は互いに地続きであることから、海外へ飛び出すことへの抵抗が少ないこと、さらには、研究組織を移るモビリティーが非常に重要視されていることが説明されました。また、ドイツでは大学院生が研究グループのリーダーとなるための教育を受ける機会に恵まれており、学生が自主的に異なる研究機関を結ぶような研究を遂行できる環境にあることなどが紹介されました。日本とドイツの教育・研究制度について比べつつ、互いの良いところは見習っていきたいとのお話でした。

【開発・実践報告】
 日本歴史研究専攻の小島先生から「学術資料マネジメント教育プログラム」について報告がありました。プログラムの構成の全体像を説明されたのち、一例として、博物館コミュニケーション論についての紹介がありました。展示の方法として、観客と同じ位置に立ち、歴史像を作るお手伝いをするという理念のもと、観客に応じたワークシートを作成するという授業が行われていることが紹介されました。文系・理系を問わず、さまざまな専門の学生が参加することについて、文系の素養を理系に身につけてもらうに留まらず、互いに新たな視点の発見につながり、自分の学問について相対化するきっかけになったのではとの指摘がありました。一方で、他分野の学生への対応について、検討の余地があることが課題として挙げられました。
 次に、生理学専攻の富永先生から「脳科学専攻間融合プログラム」について報告がありました。統計科学・情報学専攻との連携・協力関係や、受講生が幅広い専攻から参加していることについて説明がありました。特に、e-learningのコースである、一歩一歩学ぶ脳科学IIについて詳しく説明があり、一つの項目が大きな絵とその説明で構成されていること、時間と場所に拘束されずに受講可能であるため、研究で忙しい院生でも自分のペースで受講可能であることが紹介されました。
 最後に、素粒子原子核専攻の田中先生から「センシング・コントロール・アナリシスを軸とした科学と技術の進化・分野融合をめざしたプラットフォーム構築統合教育プログラム」について報告がありました。加速器研究のコミュニティでは、研究者が研究のアクティビティを維持しつつ教育を行うことについて、早くから関心があったことを、アメリカ・ヨーロッパ・日本の例を比較しながら説明され、日本は他国よりも早く、このような活動を始めていたと指摘されました。学習から研究までシームレスに繋げるため、導入は座学、続いて身につけるための実践に向けた講義・演習、最終的にオン・ザ・ジョブ・トレーニングという流れで教育していることが紹介されました。また、若手の会によって、異分野の研究者の間で水平にノウハウが伝わっていることにも言及がありました。

【ディスカッション】
 発表者を中心として、教育活動における越境について議論が行われました。小平先生からは、異分野・異文化から刺激を受けるのが基本であるというドイツの伝統的価値観について説明があり、モビリティーに対して強迫観念のようなものすら感じるとの指摘がありました。小島先生からは、日本では研究室の学生に対する囲い込みが強く、越境を良しとしない環境にあるのではとの指摘があり、総研大は大学共同利用機関を専攻とした組織なので、逆に越境を促すよう各基盤機関がオープンになる必要があると訴えられました。田中先生からは、実験で重要なのは失敗についての情報であり、若手の会が失敗について情報交換する良い機会となっていると紹介されました。

【まとめ】
 最後に本郷先生から、閉会挨拶があり、大学院教育において、越境が鍵であること、各プログラムの経緯について情報交換することの有用性について指摘されました。
 大学院教育における越境の重要性を再認識するだけでなく、実際に、少なくない学生が、総研大のプログラムを通して越境する学びをしていることが確認されました。一方で、異分野の学生に対応することの難しさや、越境した学びを行う学生の少なさなど、将来の課題を把握することになった研究会でした。