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問い合わせ先

総務課学融合推進事務室
学融合推進センター事務係

〒240-0193
神奈川県三浦郡葉山町(湘南国際村)

TEL:046-858-1629、1657(事務直通)
FAX:046-858-1546
e-mail : cpis-office(at)ml.soken.ac.jp

公募型研究事業採択課題代表者インタビュー

終了した公募型研究事業採択課題の代表者に、研究内容や成果、学際研究を行ってみての気づき、今後の展開などについて、インタビューを行いました。



研究代表者 片岡 龍峰(かたおか りゅうほう)

国立極地研究所 准教授 
総合研究大学院大学 複合科学研究科 極域科学専攻 准教授
専門は、宇宙空間物理学


近くて遠い研究所との共同作業

 片岡先生は国立極地研究所(極地研)に所属し、オーロラの研究をされています。片岡先生が代表となる本プロジェクトでは、言葉を扱う国文学研究資料館(国文研)と自然を扱う極地研といった、全く異なる分野の研究所に属する研究者が一緒に研究を進めています。二つの研究所は隣接しており、共に総研大の基盤研究機関です。


 片岡先生は、今回のプロジェクトにおいて、異分野の研究者とのオフラインにおける議論と学融合の事業による支援の2つが重要であったと感想を述べられました。本プロジェクトのきっかけは、国文研の先生との世間話の中で、崩し字の自動検索の話題となり、その流れで日本でのオーロラの古い呼称である「赤気(せっき)」を検索してもらったことだったそうです。また、学融合の事業が研究分野の異なる基盤機関の間の協力のあり方を問い続けてきたことは、本プロジェクトのために行動を起こす上で大きな動機になったそうです。


史上最大の「磁気嵐」を古典書物から紐解く

 右図は、江戸時代の京都においてオーロラが観察されたときに描かれたものです。この絵を発見した国文研の岩橋先生は、「なぜ根元の方が黒いのか」、「なぜギザギザしているのか」、「なぜ扇型をしているのか」と気になることを尋ねに、頻繁に研究室までやってこられたそうです。片岡先生も一緒になって、元の文を一字一句読み直していると、京都の東羽倉家の日記の中に天の川をオーロラが貫いたという記録があることを発見しました。当時の天の川はほぼ真上にあったことから、この絵はオーロラが真上まで伸びた様子を立体的に表したものだということが分かったそうです。さらに、京都ような低緯度の地域でオーロラが真上にまで現れたということから、このときの磁気嵐は、観測史上最大と言われている磁気嵐よりも強いものだったということを示唆しています。

 古典籍を用いたオーロラ研究のプロジェクトは、極地研・国文研・京大の3つの機関に属する研究者でスタートしました。京大のグループは、既に中国の文献から赤気という単語を検索している状況でした。本プロジェクトで、国文研の総研大生が藤原定家の明月記の読み下しをしたところ、連続してオーロラが観察される例が見つかりました。近年、似たようにオーロラが連続して観察される例があったことや、中国の文献でも同様の例が見つかったことで、オーロラの発生パターンの研究につながりました。

隕石から雷へ、広がる「古典」ハンティングの世界

 オーロラに関する研究報告会をきっかけに、次のターゲットとして隕石・雷といった分野への展開が始まっています。隕石であれば、包み紙に書かれている崩し字は国文研が担当し、小惑星探査機「はやぶさ」に使われた技術を応用した隕石の分析を極地研が担当しています。雷の例では、研究会を通して、昔の日記から雷の日をデータ化していた研究者が、雷の発生パターンの長期的な分析をしたいという研究者と巡り会うことになりました。

 大学共同利用機関という土台の元で、これから先細ると思われていた分野に、新しい風が吹き込まれている状況に、周りの研究者からも未来があるプロジェクトだと好意的な感想が得られているようです。

これからの展開

 本プロジェクトでは、極地研や国文研が、大学共同利用機関ということもあり、科学と文学・歴史学を繋ぐハブとしての重要な役割を果たしています。片岡先生は、このように知が交差して新しい学問が生まれる状況を、心から楽しんでいるようでした。さらには、このような学融合的な研究を、一般の方から大学院生にまで触れる機会を作りたいと意気込んでいます。一般向けには「古典籍からオーロラを見つけよう『古典』オーロラハンタ-」と題し、古典の中からオーロラに関する情報を、古典籍や天文に興味がある一般の方の協力で探し出すというワークショップを開いています。

 本プロジェクトをきっかけとして「知道楽」というランチセミナーも始まりました。事務方も参加する、隣接する総研大の3つの基盤研究機関(極地研・国文研・統計数理研究所)の合同の座談会です。このセミナーは、無理のない形で続けていくことで、自然に学融合の芽が生まれてくることを期待しているそうです。
 片岡先生は、思わぬ学問分野が繋がる楽しさや、それに伴う、とめどない好奇心を大事にして研究をしていきたいと話していました。また、そのような方向性を理解し・支援してくれた学融合の事業に深く感謝をしておりました。