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問い合わせ先

総務課学融合推進事務室
学融合推進センター事務係

〒240-0193
神奈川県三浦郡葉山町(湘南国際村)

TEL:046-858-1629、1657(事務直通)
FAX:046-858-1546
e-mail : cpis-office(at)ml.soken.ac.jp

公募型研究事業採択課題代表者インタビュー

終了した公募型研究事業採択課題の代表者に、研究内容や成果、学際研究を行ってみての気づき、今後の展開などについて、インタビューを行いました。



研究代表者 筒井泉(つついいずみ)

高エネルギー加速器研究機構(KEK)
素粒子原子核研究所・理論部 准教授
総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科 准教授 
専攻は理論物理学 量子力学
主な研究テーマに、「弱値及び弱測定の基盤整備とその応用」、「中間子を用いた量子力学の非局所性検証の理論的研究」などが上げられる

研究分担者

【KEK 素粒子原子核研究所】
磯 暁 教授(素粒子論)
熊野 俊三 教授(原子核理論)
福田 教紀 総研大院生(量子基礎論)
李 宰河 東京大院生(量子基礎論)

【分子科学研究所】
鹿野 豊 特任准教授(量子測定、情報科学)
杉尾 一 学振PD(科学哲学)

【核融合科学研究所】
永岡 賢一 准教授(プラズマ物理)
吉村信次 助教(プラズマ物理)

【国立天文台】
麻生 洋一 准教授(重力波天文学、 レーザー精密計測)
中村 康二 研究支援員(一般相対論、宇宙科学)

【総研大 生命共生体進化学専攻】
伊藤 憲二 准教授 (科学史、科学哲学)

【ウィーン工科大】
長谷川 祐司 准教授(中性子実験、量子物理学)



常識が変わる?物理学にメスを入れる「弱測定」

 皆さんは「量子」をご存知ですか? 「原子」や原子が結合した「分子」は理科で習いましたよね。 この原子や分子のように、物質を形成する素材にあたる小さいものを量子と呼びます。 その量子には電子や光子など様々な種類があります。 量子のうち、目に見えるものがどのような「ルール」で動くかについては、現代になり大方解明されました。 しかし、量子の中には、その「ルール」に当てはまらないものが存在するのです。

その不可解な現象を解明していく学問が「量子力学」であり、筒井先生の専門分野です。 今回、筒井先生が総研大の「学融合共同研究」の採択課題として取り組んだのは、 「新たな量子物理量の基礎の探求と精密測定への応用」と題したプロジェクトです。 近年注目される「弱測定」を用いて、これまでの量子力学の「常識」にメスを入れていきます。


「弱測定」から検証する量子力学の「ブッラクボックス」

 量子の働きについて、説明の出来ない現象をある一定の「ルール」を使って見直してみると説明できてしまうことがあります。 当てはめた「ルール」により、新たな仮説が生まれ、「ルール」に基づいて検証してみるとその新たな現象が起きます。 これらの過程で生まれた応用が、半導体などの先端技術の基礎に用いられているのです。 しかし、その「ルール」の理論までは検証してきませんでした。 それは、量子力学の「ブラックボックス」に手をつける必要があるからです。

これまでの量子力学の常識から外れる「ルール」の検証には、「弱測定」が使える、と筒井先生は考えています。 「弱測定」とは、測定を行う際の相互作用を極力最小限にした測定法です。 量子の状態を測る際、これまでの方法ではその状態が壊れてしまう可能性があります。 弱測定では、量子の本来の状態を保ちながら測定を行うことが出来るのです。 今回のプロジェクトは、弱測定を用いて量子力学の基礎を探求するだけでなく、弱測定の応用の可能性も探っているそうです。

学融合のしやすい環境、総研大

 筒井先生は、今回の研究は総研大だからこそ、広がりを見せていると言います。 筒井先生が所属する高エネ研では、専門から離れた他分野の研究者との交流は多くないようですが、この事業を通じ、核融合研や分子研、また先導研などの異分野の研究者と一緒に研究ができたそうです。 理系、文系問わず、様々な分野の研究者と研究会を開催でき、それ以降、学際的な交流にもつながっているようです。 学融合をしやすい環境がある総研大ならではと言えるのかもしれません。

 筒井先生は、今回のプロジェクトの鍵である「弱測定」が、素粒子や原子核の実験にも応用出来ると考えています。 「全部が成功するとは限りませんが、総研大だからこそ広がりを見せる「弱測定」をこれから広めていきたいです」とお話し下さいました。

弱測定の応用が見据える未来

 2016年1月、アメリカのLIGO(ライゴ)研究チームが重力波を初めて観測して話題になりました。 アインシュタインが1916年に予言してから、およそ100年かけての快挙です。 重力波は4組の巨大な鏡を使う装置で観測されました。 その観測装置は、全長4㎞に及ぶ巨大な装置です。 それ以外にも、素粒子を測るスーパーカミオカンデや巨大な加速器は全長27kmにも及び、 小さな量子や新たな発見をするためには装置の巨大化が進んでいます。

 しかし、今回の筒井先生が研究を進めている、測定法の新たなアプローチ「弱測定」を使えば 近い将来、それほど大きな装置は必要でなくなる可能性があると言います。 筒井先生の本プロジェクトにより、測定精度の向上や効率化が図られ、新たな人類の飛躍に向けた、手助けになるかも知れません。